私は「病院の救急室に運ばれて救命するのは医師として当たり前のことですよ」と答えました。 Kさんは2カ月後の診察の予約をして、帰り際に「元気で生きていたら、またお会いしましょう」と冗談を言って帰られました。
意識なく救急車で病院に運ばれたら、医療者は救命のために努力するのは当然です。がんの末期で誰が見てももう助からないようなみとりの状況とは違います。
たった一つの命です。生きたくなくなったから断食して死ぬ……もし、それをまわりが見過ごすとしたら、それは間違っていると思うのです。
どのような理由があろうとも、自殺しようとする人を見つけたら、医師であってもなくても人は本能的に助けます。遺書があっても助けます。
命を助けるのが医師の仕事です。もちろん、つらい状態を取り除いてあげるのも医師の仕事です。もし、命を助ける努力を怠るようであれば、命が軽くなり過ぎてしまうと思うのです。
がんと向き合い生きていく