医学は、病気を治す、天寿を全うできる――それを目標に発展してきました。もし「本人の希望だから」といって、助かる命を助けることなく医師が命を軽く考えるようになったら、医師は信頼をなくし、社会は混乱し、お互いに誰も信じられなくなってしまうと思うのです。
私が過去に関わったがん患者さん、そして「生きたい」と思いながら、無念にも亡くなった患者さんたちを思うと、生きている、生きていることが最も大切なこと――そう思うのです。
人生はとてもつらい日々もあります。それでも、生きていればこそ何かで喜びを感じることもできるのです。相次ぐ台風、豪雨の災害で、残念ながらたくさんの方が亡くなられました。消防隊をはじめとした皆さんが必死で救命にあたり、助かった方も多くおられます。生きていることこそが大切なのです。
後日、Kさんは隣の家から聞こえてくる老人の笑い声を耳にしました。ヘルパーさんと冗談を言い合ったのでしょうか。Kさんはホッとしたそうです。
がんと向き合い生きていく