医者も知らない医学の新常識

血糖に無関係と思いがちだが…「アミノ酸」で糖尿病になる

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 アミノ酸というのはタンパク質の材料です。その中でも必須アミノ酸と呼ばれるものは、体で作ることができないので、食事などから補充する必要があります。「アミノ酸を取って運動をすると、運動の効率が上がって、筋肉も増えて疲れにくくなる」という話があり、サプリメントとして使う人も多いようです。

 必須アミノ酸の中でも分岐鎖アミノ酸と呼ばれる3種類のアミノ酸は、そうした筋肉増強作用の強いアミノ酸として知られています。

 それでは、アミノ酸を多く取ることで血糖にはどのような影響があるのでしょうか?

 アミノ酸は糖ではありませんから、血糖値には影響しないように普通は考えます。筋肉の活動が活発になることは、糖の代謝にも良い影響を与えそうです。こうしたことから、アミノ酸が多くあった方が、糖尿病にもなりにくいのではないか、と考えられます。

 ところが、2009年の生物学の専門誌に、びっくりするような研究結果が発表されました。「肥満の人では血液中の必須アミノ酸の濃度が高く、分岐鎖アミノ酸を多く与えられたネズミは、血糖値が上昇して糖尿病になってしまった」というのです。

 その後の多くの研究でも、必須アミノ酸の血液濃度が高いと、それだけ血糖が高くなり、高血圧や動脈硬化の病気も増える、という結果は変わりがありません。

 アミノ酸の取り過ぎにも、注意が必要であるのかも知れません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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