100年人生が楽しくなる半日断食

1日3食は根拠なし?「朝食を抜くと体に悪い」は本当なのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 江部先生が考案した「食べトレ」は1日2食、朝食抜きの半日断食と糖質制限の組み合わせ。これで内臓脂肪がストンと落ちるというもの。

 朝食を抜くと体に悪いと言われているが、半日断食をしても本当に大丈夫なのか。

「1日3食が健康的で当たり前とされていますが、この根拠はどこにもありません。私自身も35年以上1日2食で超健康体ですから(笑い)。日本人は少なくとも江戸時代までは1日2食でした。人類の歴史は700万年ですから、1日3食はほんのわずか。きっかけは明治維新後に軍隊に兵隊を集めるため、『白米が毎日3回食べられる』と、貧しい農家の次男坊や三男坊を募集したのがはじまりとされます」

 つまり、1日3食が規則正しい食生活の基本という主張は、歴史的背景を無視した根拠のない幻想にすぎないのだ。

「そもそも、ご飯などを食べて糖質を取るから、血糖値が急上昇して、それが下降し、空腹感を感じるわけで、糖質制限をすれば夕食から翌日の正午まで食べなくても、平気なのです。むしろ、1日2食は人類700万年の歴史を受け継ぐ、ヒトという動物の生理・代謝に則した食事であり、正解の食事です」

 糖質を取らなければ脳に栄養が行かなくなり、きちんと働かないのでは?

「脳のエネルギーが糖質(ブドウ糖)だけというのは明らかな間違いです。脳をつくっている神経細胞は、糖質だけでなく脂質(脂肪酸)から生じるケトン体という物質もエネルギー源にしています。ケトン体は糖質制限をすると増えていきますし、そのケトン体が脳のエネルギー源になる。そもそも糖質制限をしても、肝臓でタンパク質(アミノ酸)などからブドウ糖をつくる糖新生という作用によって血糖の値は正常に保たれます。新生児も、脳の重要なエネルギー源としてケトン体が使われることが分かっています。もし、糖質制限をして頭がぼーっとするとしたら、糖質と同時にカロリー制限などをしていることで生じるエネルギー不足になっていることが原因です」

 カロリーは気にしなくていいとのことだが、脂肪の取り過ぎで肥満にならないのか。

「脂質は取っても、そのまま体脂肪にはなりません。肉の脂肪は体に悪いというのも誤解です。肉の脂には飽和脂肪酸と呼ばれる脂質が多く含まれていますが、これまでその取り過ぎは脳心血管疾患のリスクだと考えられてきました。ところが、アメリカの論文によると、35万人を5~23年間にわたって追跡した結果、飽和脂肪酸と脳心血管疾患の発生率には関連がなかった。コレステロールを多く含む卵にしても、糖質がほぼゼロでタンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルがバランス良く含まれていますので、1日2個でも3個でもOKです。コレステロールに関して食事から取ったものは、長期的には血液中のコレステロール値に影響を与えません。そして、コレステロールは悪玉ではなく、細胞膜の原料になるなど、体に必須の栄養素なのです」

(構成=中森勇人)

江部康二

江部康二

1950年、京都府生まれ。京都大学医学部卒。高雄病院理事長(内科医、漢方医)。日本糖質制限医療推進協会代表理事。近著に「内臓脂肪がストンと落ちる食事術」(ダイヤモンド社)がある。

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