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インフルエンザのブラックな事情 5人に1人が治る前に出勤

マスクでも万全じゃない
マスクでも万全じゃない(C)日刊ゲンダイ

 厚労省が例年より早い11月15日にインフルエンザの流行期入りを発表したが、「隣の席の同僚が取引先に電話で話しているのを聞いて、ドン引きしてしまいました」。

 そう憤るのは、都内のPR会社に勤めるA子さん。その40代同僚は「おとといインフルエンザで高熱が出たんですが、薬を飲んだら熱が下がったので、予定通り伺います」と話していたとか。

 A子さんは、「熱が下がったからと、すぐに出社されたら困りますよね! 取引先も、私や他の同僚だって迷惑です!」と怒りをあらわにする。

 ところが、そう考えない人も多いようだ。

 養命酒製造の「ビジネスパーソンの『風邪・インフルエンザ予防』に関する調査2019」によると、昨年の冬にインフルエンザにかかった人は12・2%と8人に1人。「完全に治ってから出勤した」人は77・9%と多数派だが、一方で「完全に治る前に出勤した」人は18・9%と5人に1人近くもいた。さらに驚きなのは、「休まず出勤した」人が3・3%もいたということだ。

「池袋大谷クリニック」の大谷義夫院長は「治る前に出社するなんて、とんでもない!」と、こう指摘する。

「インフルエンザは、熱が下がってもウイルスの排出は続く。つまり、周囲に感染させる可能性があります。『インフルエンザは発症後5日を経過し、かつ、解熱後2日を経過してから出勤』といわれている。インフルエンザの拡大感染を防ぐためには、これを守るべきです」

 マスクで防御しているから周囲にうつさないだろう、という考えも甘い。インフル対策においてマスクは万全ではない。

 前出の調査では、「インフルエンザ・ハラスメント」についても質問している。インフルエンザを理由にした嫌がらせのことで、受けたことがあると答えた人は3・7%。数こそ少ないものの、その中身は「休ませてもらえなかった」(20代女性)、「インフルエンザと認めてもらえなかった」(50代男性)、「仮病じゃないの?(と言われた)」(40代男性)、「自覚はないのか。みんなが迷惑してるんだけど(と言われた)」(30代男性)などというから、シャレにならない。

 そうなると、「熱が下がったから出社しよう」と思う人が出てきても仕方がない。その結果、感染拡大のリスクが高まるわけ。インフルエンザに関しては発症者だけでなく、周囲の人も「しっかり休むことが重要」と認識すべきだ。

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