専門医が教える パンツの中の秘密

風邪ウイルスにご用心「はやり目」がペニスにうつる?

写真はイメージ
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 目が真っ赤に充血している、オシッコをするとペニスがすごく痛い。

 この2つの症状が同時に起きても、普通なら別々の病気だと思うでしょう。そして、眼科と泌尿器科を受診する。その対応は間違っていませんが、この2つの症状はひとつのウイルスが原因で発症することがあるのです。

 それは“風邪”の原因のひとつである「アデノウイルス」の感染で引き起こされます。アデノウイルスは100種以上の血清型や遺伝型があり、その型によって「呼吸器感染症」「プール熱(咽頭結膜熱)」「はやり目(流行性角結膜炎)」「出血性膀胱(ぼうこう)炎」「胃腸炎」などさまざまな症状が表れます。また、同じ型でも感染者によって、咽頭炎が主であったり、結膜炎が主であったり、下気道炎が主であったりします。

 そして尿道に感染した場合には、激しい排尿時痛が特徴の「アデノウイルス性尿道炎」を起こします。尿道口から分泌物が出ることもあり、その場合には淋病のような黄色いうみが出るのではなく、クラミジアの症状に似てサラサラした水様性分泌物が出ます。

■2週間は“夜の生活”を自粛すべし

 では、どのような経路で尿道に感染するのか。これまでの報告から推測される感染パターンは大きく分けて次の3つがあります。

 ①セックスパートナーの咽頭に感染したウイルスがオーラルセックスによって尿道に感染するケース。②女性の腟や子宮頚部に感染したウイルスがセックスによって男性の尿道に感染するケース(またはその逆)。③目に感染したウイルスが手に付着し、その手でペニスを触り尿道に感染するケース。

 特に、尿道炎患者さんから検出されるウイルスの型は、流行性角結膜炎を起こす型と一致することが多い。ですから、アデノウイルス尿道炎で来院される患者さんの多くは目が充血しているので、専門医が診ればだいたい見当がつきます。

 通常、淋菌やクラミジアなど他の種類の尿道炎の治療では、抗生物質(抗菌薬)を使います。しかし、アデノウイルスに対する特効薬(抗ウイルス薬)はありません。治療は、排尿時痛などに対する痛み止めの処方など対症療法が中心となります。はやり目の方の治療も抗炎症薬の点眼で対症療法となります。

 通常は1週間程度で痛みは治まり「治った!」と思ってしまいますが、症状消失後も感染可能なアデノウイルスが1週間程度は尿中に排出されることが分かっています。パートナーへの感染を防ぐ上でも、症状がなくなっても1週間程度、合計2週間くらいはペニスをパンツの中にしまっておいた方がいいでしょう。

尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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