上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

研究は進むが…AIを使った診断と治療にはまだ課題が残る

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 ゲノム診断で乳がんリスクが高いとわかったハリウッド女優は予防のために乳房を切除しましたが、そこまで金銭的に余裕がある人は多くないでしょう。となると、がんリスクが高いと診断されても、実際に発病するまで何も治療を受けられない患者さんは、ずっと不安を抱えながら生活することになります。ひょっとしたらがんを回避できる可能性もあるわけですから、「それなら悪い情報は聞きたくなかった」という人もたくさんいるでしょう。ゲノムやAIによる診断結果を、良い情報も悪い情報もすべて聞いて受け入れるのか。患者側は考えておく必要があります。

 いまは、医師が患者さんに病状や治療について十分な情報を伝え、患者さんに納得してもらったうえで治療法を選択する「インフォームドコンセント」が欠かせない時代です。また、患者さんには知る権利もあれば、すべてを聞かない権利もあります。医療現場でAIを本格的に導入していくには、そうした医療倫理的な側面もいま以上に成熟させてからでなければ、大きな混乱を招くでしょう。

 課題をひとつずつクリアして、AIによる診断や治療が当たり前になる日が来るのを期待しています。

4 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事