漢方の意外な実力

臨床試験で判明 高血圧を改善する釣藤散にもう一つの効果

漢方は病名でなく体質で処方を見極める
漢方は病名でなく体質で処方を見極める

 高血圧の患者数は、4000万人を超えると推計されます。その延長線上には、脳卒中や心筋梗塞といった重大病が待ち受けているだけに、血圧が高い人はしっかりと下げることが大切です。そんな国民病の高血圧対策でも、漢方が役立つのです。

 たとえば、釣藤散と大柴胡湯の2つに関する無作為化比較試験が行われています。

 まず結論から紹介すると、釣藤散を投与した29人と投与していない33人を8週間にわたって追跡したところ、釣藤散のグループは、収縮期血圧(上)と平均血圧、拡張期血圧(下)が有意に低下。グループ全体の比較では有意差が見られなかったものの、3割近くの人の血圧が低下し、自覚症状のひとつの耳鳴りが有意に改善しています。

 大柴胡湯では、16人の投与グループと16人の非投与グループに分けて追跡。平均血圧と拡張期血圧(下)は、投与グループが8週目に有意差をもって低下。こちらもトータルの降圧効果のグループ比較では、有意差が認められませんでしたが、21・4%の方の血圧が下がりました。

 漢方は、病名ではなく体質で処方を見極めるため、釣藤散は体力がなく疲れやすい体質の高血圧に、大柴胡湯は体力がある高血圧に処方されます。そういう使い分けをすることで、軽症高血圧の血圧を下げ、耳鳴りをはじめとする随伴症状の改善も期待できるといえるでしょう。

 黄連解毒湯は、一般にのぼせ気味で、顔色が赤く、イライラしている人の、不眠症や神経症、胃炎、めまいなどに使われますが、のぼせや顔面紅潮といった高血圧の随伴症状にも用いられることがあります。

 その黄連解毒湯についても、服用する134人と服用しない131人に分けて8週間追跡。特にのぼせや顔面紅潮は、有意差をもって改善していたことが報告されています。

 西洋薬の降圧剤はとても優れていて、効果的であることに異論はありません。しかし、それでも血圧が安定しなかったり、自覚症状が改善しなかったりすることはままあります。そんなとき、漢方薬を使うといいでしょう。気になる人は、ぜひ漢方内科を受診してみてください。=おわり

(梅田悦生・赤坂山王クリニック院長)

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