病み患いのモトを断つ

松本零士さんは伊で救急搬送 海外旅行の高額医療費の備え

訪問先のイタリアで倒れた漫画家の松本零士さん
訪問先のイタリアで倒れた漫画家の松本零士さん(C)日刊ゲンダイ

 海外で体調を崩したら厄介だ。今月15日には、「銀河鉄道999」などでおなじみの漫画家の松本零士さん(81)が訪問先のイタリアで倒れ、脳卒中の疑いと現地紙が伝えた。その後の精密検査で脳には異常がなく、幸い容体は改善したそうだが、海外で入院するとなると、高額な医療費を請求されることがある。万が一に備え、海外旅行保険はどうするか。

 ジェイアイ傷害火災保険が今年7月に発表した「2018年度海外旅行保険事故データ」が興味深い。海外で事故を起こした割合を示す「事故発生率」は、3・7%。保険金支払い件数を保険加入者数で割って求めたもので、前年度より0・28ポイント上昇している。27人に1人だから、意外と多いだろう。

 その名目は、病気やケガの治療費や搬送費用を補償する「治療・救援費用」が46・4%と断トツだ。手荷物の盗難や破損を補償する「携行品損害」26・9%、偶然な事故での出費を補償する「旅行事故緊急費用」23%と続く。

 旅行先のエリア別にみると、北米、アジア、オセアニアでは「治療・救援費用」が多く、「携行品損害」はヨーロッパやアフリカで目立つ。

海外での入院は高額になる
海外での入院は高額になる(C)日刊ゲンダイ
旅行前には必ず保険適用条件の確認を

 気になるのは、治療・救援費用で支払われた保険金だろう。1位はハワイのホテルの部屋で意識を失ったケースだ。救急車で病院に搬送され、心筋梗塞と診断され、手術を受け、19日間入院したところ、3052万円に上った。〈別表〉の通り、トップ5は2000万円超で、心筋梗塞が3件。

 治療費が補償されたすべての件数のうち、65歳以上は4割。14年度の56%から年々低下傾向にあるが、300万円以上をカバーした高額医療費用事故に限ると、65歳未満の4倍という。その最多の要因が脳卒中で、転倒によるケガや肺炎、心臓病などが並ぶ。

 どれも重い病気ばかりだが、同社の資料を見渡すと、腹痛と下痢による腹部痛の診断で1081万円を支払った米国のケースも報告されている。詳しい病名は不明だが、腹部痛で一般的なサラリーマンの年収を上回る医療費はシャレにならないだろう。そこで海外旅行保険だが、選び方はどうするか。経済評論家の荻原博子氏が言う。

「クレジットカードには海外旅行保険が付帯されているものがありますから、旅行前には必ず保険が適用される条件を確認しておくこと。治療費の保障には限度額がある。年齢や旅行先の衛生面、治安などによって、足りない部分だけカバーするといい。ネット系の損保なら、必要な分の保障だけ組み合わせることができますから」

 現地での医療費は負担しなければいけないが、その負担を軽くするテクニックもあるという。

「海外療養費制度がそれです。海外の医療機関で受け取った領収書と明細を健保組合や自治体に提出すると、年収と年齢に応じて、支払った金額の7割か8割が日本円に換算して後日、支払われます」

 海外療養費の対象になるのは、日本で保険適用になっている治療に限られるが、覚えておいて損はない。

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