男性医学の父である、熊本悦明医師は今年で90歳。今も現役バリバリで診療や研究を行っている。その元気の源は元気ホルモンであるテストステロン(男性ホルモン)の補充だ。
「私は70歳の時に日本メンズヘルス医学会を設立しました。医学界で活躍している医師らと、自らが生き証人となり、患者さんとともに実証をし、元気に人生を楽しんでいます。現在、私のクリニックには、大手企業の会長や社長など、第一線で活躍されている人たちが口コミで来院されています。きっかけはゴルフの仲間内で『なぜ、そんなに球が飛ぶようになったのか』と話題になり、紹介で来られるケースが多いようです。また、80歳でエベレスト登頂に成功した三浦雄一郎さんをはじめとした著名人や芸能人、政治家の方たちもテストステロンで元気になっています。元気な人たちの後ろには『テストステロンあり』なんですね」
■分泌量は20代がピーク
働き盛りの40代、50代は仕事に追われ、会社でも家庭でも責任は増すばかり。周囲を見渡しても、心身の不調で会社を休んでいるケースは少なくない。
そして、そんな中高年のほとんどが、ストレスによってテストステロンの分泌が低下してしまっているのだという。
「私たちは人生100年時代に突入しました。ただ長生きするだけでなく、楽しく過ごさなければなりません。いつまでも若く、健康でいるために必要なのがテストステロンなのです。実際にアメリカでは、このホルモン補充療法を多くの人が行っており、心配されるようながんにつながるような結果は出ていません。今の時代、目が悪ければメガネをかけたり、コンタクトをしたり、レーシック手術をしますよね。歯が悪ければ、入れ歯やインプラントなども。それと同様に、元気がなければテストステロンの量を増やすような食事や生活をしたり、積極的に補充したりすれば、元気で充実した生活が手に入れられるのです」
代表的な男性ホルモンであるテストステロンは精巣(睾丸)でつくられ、筋肉や骨格をつくる。また、生活において活力を増進させる、性欲を高めるなどの働きをする。
しかし、分泌量は20代をピークに徐々に減り、重度のストレスがかかると、さらに低下する。
その影響で、男性更年期障害が引き起こされることもある。
「男性に特徴的なのは『朝立ちしなくなった』といった隠れ性機能の衰えが出てくること。これは睾丸の働きの低下による口に出しにくい症状、かつ男性の更年期障害が広く認知されていないこともあり、カミングアウトできない人は多いのです。しかし、人生の後半戦を充実させるためには、40代、50代のうちから、自分の体に関心を持ち、必要なケアをしていくことが大切。だからテストステロンの重要性や、その力をどう生かすかを知る必要があるのです」
本連載では熊本先生が提唱するテストステロンによる体調管理を全8回にわたり、余すことなく紹介していく。
(構成=中森勇人)
90歳現役医師 最強の体調管理