遺伝子治療薬はここまで来ている

技術の進歩で薬の効果や副作用を予測できるようになった

写真はイメージ
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 近年、遺伝子治療薬が急速に発展してきた主な理由として、①遺伝子の解析技術の向上と、②遺伝子治療薬を製剤化する(薬として安定で安全なものにする)技術の向上があげられます。

 まず発展してきたのは遺伝子解析技術です。微細な遺伝子の異常を高感度に検出する技術が開発されたことによって、病気の原因遺伝子や薬の効き目に関係する遺伝子異常を見つけることができるようになりました。また、一度の検査でたくさんの遺伝子を解析する技術も開発されました。

 ほかにも、微量のサンプルから遺伝子を検査する技術が開発されたことによって、たとえば1滴の血液や1本の毛髪といった超微量の検体から検査をすることが可能になりました。これは検出の感度が上がっただけでなく、「どのような検体を調べたらいいか」がわかってきたという医学の進歩でもあります。

 このように発展してきた遺伝子解析技術は、薬として利用されるのに先行して、遺伝子検査に用いられてきました。遺伝子検査はドラマで目にするような個人や親子関係を特定するものだけではありません。医療では、その遺伝子から作られるタンパク質を標的にした分子標的治療薬という薬が本当に効くのか、副作用が出やすくないかといった情報を事前に判定するための検査に使われてきました。

 こうした薬の効果や副作用を事前に予測するための遺伝子診断を「コンパニオン診断」と呼びます。分子標的治療薬は効果も高い半面、副作用がひどく表れる患者も多くいます。また、高額なものもたくさんあるため、コンパニオン診断の発展によって事前に効果と副作用を予測し、適切な治療選択を導くことで患者さんの負担が大きく軽減されました。

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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