がんと向き合い生きていく

誤った情報を信じてせっかくの人生を無駄にしないで欲しい

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 その担当医は、患者の体全体のことを考えたらがんの塊を焼くだけでは済まないことは分かっているだろうに、自分の専門のことだけをやっていればよいと思っているのか。Rさんの話を聞いていて、私はだんだん腹立たしくなってきました。 さらにRさんは、「抗がん剤は効かないという医師の本を読んで、抗がん剤治療は受けないことにしました」と言われるのです。

 これだけがんの治療薬が発達し、たとえ薬だけでは治癒しなくとも治療によって生活の質は向上し、生存期間が何倍にも延びている時代なのに……Rさんは誤った情報を信じた犠牲者だ。いまのRさんの状態はとても悪い。これ以上、Rさんに担当医のことを問うのは気の毒に思いました。

■最も効く治療法を選択できたはず

 この10年、大腸がんに対する抗がん剤治療と分子標的薬は目覚ましい効果を認め、大腸がんのステージ4、肝転移や肺転移があっても、生存期間の中央値は30カ月以上、手術とうまく組み合わせれば治癒した患者さんもいらっしゃいます。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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