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原因はカートリッジ 電子たばこで肺疾患が激増し死者40人

写真はイメージ
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 電子たばこが原因とみられる重い肺疾患がアメリカで激増。その原因物質が今回初めて特定され、大きなニュースとなっています。

 この肺疾患は、せき、呼吸困難、胸の痛み、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、発熱などの重い症状を伴うもので、9月に当連載で取り上げた段階での全米の患者数は約200人。初めての死者も出ました。さらにその後も症例は増え続け、11月上旬までに患者数は2051人に達し、死者も40人に及んでいると米疾病対策センター(CDC)が発表しています。CDCでは「電子たばこの何がこのような重篤な肺疾患を引き起こすのか」と原因物質の特定を急いでいました。その過程で、「THC」というマリフアナ成分入りのカートリッジとの因果関係が疑われるようになりました。

 研究者が患者29人の肺組織を調べたところ、そのすべてからビタミンEアセテートが検出されました。また同時に8割以上の患者からもTHCが検出されたため、THC入りの電子たばこカートリッジに添加物として含まれているビタミンEアセテートが原因と分かったわけです。

 ビタミンEアセテートは聞き慣れない名前ですが、実は抗酸化剤、皮膚のコンディショニング剤として化粧品などに普通に利用されている化学物質で、珍しいものではありません。

 しかし一方のTHCは、マリフアナから抽出される“ハイになる”成分で、アメリカ50州のうちマリフアナが合法化されている10州以外では違法です。つまり、肺疾患の原因になっているとみられるTHC入り電子たばこのカートリッジも、ほとんどが闇ルートで違法に販売されたものと考えられ、その取り締まりも非常に困難とされています。

 CDCでは引き続きTHC入りの電子たばこ、特に自分で正規に購入したもの以外の家族や友人から譲り受けたもの、インターネットや個人業者から購入したものは使用しないよう呼びかけています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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