海外報告では全体の2割が…「認知症」を起こす薬リスト

オレの車、どこだっけ?(写真はイメージ)/
オレの車、どこだっけ?(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 ちょっとした物忘れや記憶違いをしたり、何もないところでつまずいたりすると、ある程度の年齢なら「年のせいか」と思うだろう。それで脳トレや軽い運動を始め、本格的な認知症にならないように予防する。その前段階の軽度認知障害を含めると、認知症の人は今や65歳以上の4人に1人だが、実は、ありふれた薬の影響で認知症のような症状が表れている可能性もあるという。

〈表〉を見てもらうのが、手っ取り早いだろう。厚労省がまとめた「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」から引用したものだ。〈表〉の右側にリストアップされた薬を服用することで、左側の症状が表れる可能性があることを示す。

 薬の名前から浮かび上がる病名は、高血圧や糖尿病など生活習慣病、うつ病や不眠症、尿漏れに結びつく過活動膀胱など中高年ならおなじみの病気が目立つ。

 抗ヒスタミン薬は花粉症や鼻炎などに使用され、気管支拡張薬は喘息や“たばこ病”といわれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)に処方される。NSAIDは鎮痛剤だ。

〈表〉を見渡すと、同じ薬が複数の項目でリストアップされていることに気づく。いろいろな症状でこれらの薬を服用すると、そこに含まれる成分のうちいくつかが重複。その成分が強化され、それによる副作用が表れやすくなるのだ。

(「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」から)
(「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」から)(C)日刊ゲンダイ
特に危ないのは抗コリン薬

 海外の報告によると、認知症のような症状が見られる人のうち2割ほどは薬の影響とみられている。

 聖路加国際病院内科名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏が言う。

「複数の薬を併用することによって生じるこれらの症状は高齢者に多く、総称して薬剤性老年症候群と呼ばれます。厄介なのは、薬の影響がなくても、どの症状も高齢者に多く、薬剤性と気づきにくいこと。原因の薬も特定しにくいのですが、要注意の薬はあります。抗コリン薬とベンゾジアゼピン系の睡眠薬と抗不安薬です」

「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」には、こんな記述がある。「高齢の患者に使用すると、認知機能障害(せん妄・認知機能低下・認知症)をきたす可能性のある薬物には何があるか?」という問いに対して、3つの薬剤が挙げられる。そのうちの2つが抗コリン薬とベンゾジアゼピン系の睡眠薬と抗不安薬で、どちらもエビデンスの質は「高」、推奨度は「強」だ。

 特に危ないのは、抗コリン薬だという。医薬情報研究所エス・アイ・シーの医薬情報部門責任者で薬剤師の堀美智子氏が言う。

「抗コリン作用を持つ薬は、抗精神病薬(フェノチアジン系)や抗うつ薬(三環系)、パーキンソン病治療薬、過活動膀胱治療薬、胃薬、抗ヒスタミン薬など幅広く含まれています。一般に多剤併用の悪影響は6剤以上から表れるといわれますが、決してそうではありません。2つ、3つの薬剤で起こることも十分あります。それだけに、抗コリン作用のある薬は、とても多いので、要注意なのです」

 薬の影響で認知症のようになるのは怖いが、裏を返すと、薬を見直せば治る可能性があるということだ。

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