上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「貧血」の裏に深刻な心臓疾患が隠れているケースがある

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

「貧血」というと、疲れ、だるさ、立ちくらみといった症状が表れる程度で大したことはないと軽視されがちですが、甘く見てはいけません。心臓疾患と大きな関係があり、最悪の場合は死に至る危険もあるのです。

 貧血とは、血液中の正常な赤血球の量が少なくなっている状態を指し、赤血球に含まれるヘモグロビンの量も低下します。ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ役割があるため、貧血になると細胞が酸欠状態になり、不調が表れるのです。

 貧血が起こる原因はさまざまですが、その約70%は体内の鉄分不足による「鉄欠乏性貧血」です。女性であれば生理の際の出血量が多いと起こるケースもありますし、子宮筋腫が隠れている場合もあります。消化管など体内のどこかで出血していて血液量が少なくなることでも貧血が起こります。

 貧血になると、心臓の拍動数が増加して鼓動が激しくなる「心悸亢進」という症状が表れます。貧血による体内の酸欠状態をカバーするため、心臓が必死に働いて少しでも多く血液を循環させようとするのです。その分、心臓には大きな負担がかかるので、狭心症や心筋梗塞、心臓弁膜症では心不全といった心臓疾患を発症しやすくなってしまいます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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