医療情報の正しい読み方

「冷え」と「インフルエンザになる」関係を分析…何が必要か

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回、「今年は1カ月、例年よりインフルエンザの流行が早かった」という情報を使い「記述研究」の話をしました。

 疫学研究には介入研究と観察研究があり、観察研究には記述研究と分析研究があります。

 この流行開始時期という指標に追加し、さらに「気温」「湿度」「気候」など、流行に関連すると予想される指標を調査して、その関係を検討すると「分析研究」という観察研究になります。「相関」「因果関係」を検討する研究とも言えます。

 さらに状況を明確にしましょう。よく「冷えると風邪をひく」と言います。インフルエンザも冷えることと関係しているかもしれません。この関係を検討するには、インフルエンザの患者さんが来院したときに、薄着だったとか、暖房を入れ忘れたとか、実際に寒かったとかがなかったかどうか調査するわけです。そうしたところ、インフルエンザの患者では50%の人が冷えに関する体験をしていたという結果が得られたとしましょう。

 これで冷えはインフルエンザに関係していると思われるでしょうか。

 しかし、これは「インフルエンザ患者では50%が冷えに関する体験があった」という記述研究にすぎません。それでは相関や原因を検討する「分析研究」にするためには、どうすればいいでしょうか。それは比較対照を置くことです。具体的にはインフルエンザ患者でない人で冷えの体験があったかどうかを同時に調査し比較することです。インフルエンザでない人でも50%が冷えを体験していれば、インフルエンザと冷えには関連がないということになります。

「分析研究」において、この比較対照があるかどうかというのは決定的な吟味のポイントです。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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