進化する糖尿病治療法

糖尿病の発症1年未満は膵臓がんの発症リスクが5倍高い

定期的な検査で血糖をチェック(写真はイメージ)

 さらに、抗がん剤治療や放射線治療が効きにくく、予後が悪い。とにかく一刻でも早く見つけて治療を行うことが肝心ですが、1~2センチの早期で見つかっている患者さんは、ほとんどが“別の検査を受けた時に見つかった”というケースなのです。まさに、血糖コントロールが悪くなったことから膵臓がんが見つかった男性のように。

 この男性が膵臓がんを早期発見できたのは、“たまたまラッキーだった”わけではありません。しっかりと生活習慣改善に取り組み、定期的な検査で血糖コントロールを確認していたからこそ、です。

 健康診断で血糖値が高いと指摘されているのに再検査を受けずに放っていたら、そもそも糖尿病の診断・治療を受けていないわけですから、膵臓がんの早期発見につながらなかったでしょう。

 また、糖尿病診断後、生活習慣改善に取り組んでいなければ、「血糖コントロールが悪いのは、がんだからではないか」という疑いも生じなかったでしょう。知らないうちに膵臓がんが進行し、気付いた時には打つ手が極めて限られた状態だった、ということも十分に考えられます。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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