骨と筋肉の疑問に答える

肉離れ直後は大切…「RICE」とはどんな処置なのか?

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

【Q】スポーツ以外で肉離れすることはありますか?(運動嫌いの60代男性)

【A】私などは寒い冬は自宅でじっとして過ごしたいタイプですが、市民マラソン大会などに参加される中高年の方も多いようです。大会では普段のジョギングと違って他人と競走するため、自分でもびっくりするような闘争心に火がついて、気持ちは20代という人もおられます。そんなとき注意したいのが肉離れです。

 肉離れは、正式には「筋断裂」と呼びます。ジャンプやダッシュといった筋肉の瞬間的な収縮が過度に行われることで、筋膜が急に引っ張られて部分断裂を起こすことを言います。ゴール前で前の走者を抜き去ろうと無理をして太ももの後ろを叩かれたような違和感を覚えて片足に鋭い痛みが走り、足首が動かなくなる。やがて太ももの裏側が内出血して腫れあがる。よくあるパターンです。筋肉の柔軟性が失われた中高年にみられ、筋肉の柔軟性以外に筋肉疲労によっても発生します。

 筋断裂は3段階に分かれています。筋線維のわずかな損傷がⅠ度、一部断裂がⅡ度、完全断裂がⅢ度です。肉離れはⅠ度の状態を指します。痛みと共に損傷や断裂が生じた場所に凹凸ができたり、皮下出血がみられたりします。

 肉離れを起こした直後は「RICE」と呼ばれる処置を行うことが大切です。これはRest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の略です。患部を冷やして出血、腫れ、痛み、炎症を鎮める冷却は受傷後15分以内に始めて20分間程度冷やし、患部の感覚がなくなったらいったん外して痛みが出たら冷やすことを繰り返すことが良いとされます。テープや包帯で患部を圧迫する目的は腫れや内出血を防ぐこと。患部の下から心臓方向に向かってらせん状に巻いていきます。患部より上は徐々に緩くしていくのがコツです。挙上とは可能な限り患部を心臓より高い位置にすることです。安静は損傷部の腫れや血管・神経の損傷などのさらなるダメージを防ぐために重要です。

 受傷直後にこうした適切な治療が行われないと、その後の治療期間が長引いたり、再発を繰り返すことになりますので注意が必要です。

 ちなみに肉離れは運動していなくても生じることがあります。ある70代の男性は、ソファに座って立ち上がった瞬間に強い痛みを感じて病院へ。超音波で筋肉の線維が切れていることが確認され、肉離れと診断されました。

水井睦

水井睦

みずい整形外科院長。日本整形外科学会認定専門医、同会認定脊椎脊髄病医、同会認定リウマチ医、日本体育協会認定スポーツドクター。1995年北里大学医学部卒業。横浜市立大学医学部整形外科入局。大学病院、国立病院などを経て、2005年から東京・祐天寺にて開院。

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