後悔しない認知症

大事なのは子供や周囲の「幸せに生きてほしい」という気持ち

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「とにかく、いろいろなことが面倒くさくなりましたね」

 半年ほど前に軽度のアルツハイマー型認知症と診断された知人が言う。80歳。診断を受け入れ、症状の進行を抑える効果が認められているアリセプトを服用している。彼はこれまで長年にわたって自己啓発に関する著書を数多く世に出してきた。ある日「それでも何とかここまでやりました」と近々刊行予定の著書のゲラ(完成前の試し刷り)を見せてくれた。赤い字で加筆、修正がなされていた。少し読ませてもらった限りでは、ロジックにも文章表現にも、不可解な点は見られない。さらに、文筆業を生業にするだけあって、自分の現状に関しても、いたって冷静な判断をする。「認知症に関する本を読みました。症状として『意欲の低下』が見られるとのことでしたが、まさに私が感じていることです」と語り、こう締めくくった。

「これからも依頼があれば、死ぬまで現役を続けていきたいですね」

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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