血管・血液を知る

血液型による性格診断は根拠のない迷信なのか?

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 血液型による性格診断は定番の話題です。「血液型は何型ですか?」という会話をキッカケに初対面同士でも仲良くなることから、世代を超えて多くの場面で使われています。確かに「生真面目なA型」「気分屋のB型」「おおらかなO型」「マイペースで二重人格なAB型」などという区分けは、学校や職場の人間関係を語るうえで面白い話題です。

 しかし、「血液型による性格診断は迷信で科学的根拠がない」というのが医師や科学者の大方の見解です。

 そもそもA、B、O、ABという血液型だけで性格を4分類するのはあまりに短絡過ぎるし、お遊びの域を越えない、というのはもっともな話です。血液型性格診断の話をする人も、まったくそれを信じているわけではないでしょう。

 ところが最近、輸血の際にABO式やRH式の分類をする以外に意味がないとみられていた血液型には、血液型ごとに免疫力に違いがあり、かかりやすい病気とかかりにくい病気があることなどが明らかになっています。血液型と病気の関連性については、有名な科学雑誌「Nature」の2000年の総説で「胃腸管に関するいくつかの形質に弱い相関が確認できるが、血液型と疾患の相関については再現性よく示されたものはない」と説明されました。

 しかし、その後の研究で、健康面(ストレス抵抗性や病気のリスク)へ影響があるという報告がいくつかあります。個別的には、脳性マラリアへの移行のしやすさはA型がO型の1・3倍、胃(十二指腸)潰瘍でピロリ菌の感染しやすさがO型のみ25%ほど高い、そしてノロウイルスの一部の株はO型の感染率が若干高い、O型は血液凝固に必要なフォン・ウィルブランド因子濃度が他の型より25%ほど低いので血栓が起きにくい、心筋梗塞はO型よりA型やB型に多いなどの報告があります。

 血液型が体の形成に関わっているのなら、性格形成に影響があってもおかしくない、というわけです。

 実際、血液型と性格の関係については医学的エビデンスに乏しく日本や朝鮮半島の迷信といわれつつも、欧米でも研究が進められてきました。

 そこで注目されたのがドーパミンよりノルアドレナリンを作り出すドーパミンβ水酸化酵素(DBH)です。

 01年に米国で出版された「Live Right for Your Type」には「O型の人では、ストレスを受けているときにノルアドレナリンやアドレナリンなどのカテコールアミンを取り除くのが難しいことが精神障害に密接な関係があると考えられる。そして現在の研究は、血液型と性格の関係がDBHの活動と関連することを示唆している」と書かれています。ABO式血液型を決定する遺伝子と同じ場所にDBHというストレスに関係する遺伝子があり、血液型と性格の関係があっても不思議ではない、というのです。

 日本でもABO式血液型の遺伝子型と性格特性には有意な関連が認められるとした研究があり、15年に「PLOS ONE」という電子版の研究雑誌に掲載されています。

 とはいえ、血液型と性格の関係については、研究手法の問題などもあり、医学界が認めている状況にはありません。今後、どのような結論が出るのか、私も楽しみです。

東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

関連記事