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腸<上>14%が便秘…排便のコツは朝の水分で腸を刺激する

朝起きた直後コップ1杯の水を飲む
朝起きた直後コップ1杯の水を飲む(C)日刊ゲンダイ

 全人口の約14%(約7人に1人)が「慢性便秘」と推計されている。年代別で見ると20歳から60歳まででは女性が圧倒的に多いが、65歳以上の高齢層になると男女とも年齢が上がるにつれて、便秘を訴える人が急増する。

 では“便秘”とは、どれくらいの排便頻度になるのか。「便秘外来」の専門医、第一人者である「松生クリニック」(東京都立川市)の松生恒夫院長が言う。

「医学の世界では、『何日間排便がなければ便秘である』といった明確な定義はありません。2017年10月に『慢性便秘症診療ガイドライン』が発行されましたが、その中で便秘の定義は『本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態』としています。そして、排便回数減少による腹痛、腹部膨満感や硬い便による排便障害などの症状の出現が指摘されています。一般的には、排便が週に1回程度で、お腹の苦しさや不快感などがあれば便秘だと考えます」

 高齢者の便秘の場合、腸管の加齢による変化も伴う便秘と考えられる。例えば、腸の弾力性は20歳をピークに次第に低下し、75歳前後では20代と比較して3分の2から2分の1程度まで低下してしまうという。

 これは誰にでも起こる加齢による腸の機能の自然な低下。若いときから便秘傾向の人は下剤を服用していると、加齢とともにさらに追い打ちをかけるように、腸管機能が低下してしまうことになる。そのため、若い世代からの便秘対策が大切になるのだ。

 また若い頃から便秘があると、連日の老廃物の排出が難しくなるためか、大腸がんの危険性が増加するという報告もある。

 たしかに大腸がんの発症部位は、便のたまりやすい直腸とS状結腸で7割を占める。大腸がんの原因はいまだ不明だが、リスクの可能性を考えたら便をためない方がいいという。

■食物繊維は「不溶」と「水溶」を2対1で

 便秘を防ぐためには、どんなことが大切になるのか。

「腸にも生体リズムがあり、一日内で腸が活発に働く時間帯が2~3回あります。その中でも最も活発的なのは、朝起きたばかりの時間帯です。このときに胃に食べ物や水分が入ると、『胃・結腸反射』が起こり、下行結腸からS状結腸に向けて、強い収縮運動である『大蠕動』が起こります。そして結腸内にたまっていた便が直腸に移動して便意が起き、排便できるのです。ポイントは、大蠕動のピークである朝に排便を促すリズムをつくることです」

 そのためには、朝起きた直後にコップ1杯の水や白湯を飲むこと。胃に刺激を与えるためなので、温かいコーヒーやお茶でもかまわない。そして少量でもいいので朝食は必ず取ること。大蠕動は朝食後に最も強く起きるからだ。この大蠕動のゴールデンタイムに排便のリズムを合わせることが大切になるという。

 そして、昼食はなるべく食物繊維を多めに取り、夕食はなるべく消化の良いものを就寝の3時間前に済ませるようにする。

 食物繊維は便のもとになり、便のカサを増やしたり、軟らかくしてくれる作用があるが、大きく2種類がある。

「不溶性食物繊維」は、水に溶けない食物繊維で、硬くて消化されず、胃や腸で水分を吸収して大きく膨らむのが特徴。穀類やイモ類、豆類、根菜類に比較的多く含まれる。「水溶性食物繊維」は、水に溶ける食物繊維で、ネバネバしていてゲル状になり、食べ物を包み込んで消化吸収を穏やかにする。果物、大麦やもち麦、スーパー大麦、海藻類やキノコ類に多く含まれている。

「理想的なバランスは、不溶性と水溶性を2対1の割合で取ることです。通常、不溶性を多く取り過ぎてしまう傾向があるため、便が硬くなり、ますます排便しづらくなっている人が少なくありません。ただし、水溶性の含有量が多い海藻類やキノコ類も比較的、消化が悪く、よく噛まないと未消化のまま腸に至ります。高齢者や腸の手術の既往のある人は、キウイフルーツやリンゴ、バナナなどの果物で水溶性を取る方がいいでしょう」

 また、慢性便秘の人は気温が低下すると便秘が増悪する傾向がある。それは寒いと交感神経優位の状態が続き、腸管運動が抑制されて排便力の低下につながるから。

 入浴は湯船に漬かって、お腹を温める。冬は腹巻きなどをして、お腹を冷やさないことが大切だという。

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