Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

効果は0.1%…厚労省のデータで判明したゲノム医療の現実

検診で早期発見するのが大事(C)日刊ゲンダイ

 検査を受けて遺伝子変異が見つかるのは、大体2人に1人ですが、遺伝子変異があっても、その変異に関係する薬剤が未開発のケースは珍しくなく、厚労省の調査の通り薬を使用できるのは、検査を受けた人のうち10%程度です。

 そうすると、その年のがん患者全体では、0・1%にすぎません。1000人に1人です。

 検査にかかる時間もネックでしょう。

 検査には摘出されたがん組織が必要で、十分な量がなければ新たに採取することが必要です。結果が出るまでにかかる時間は、4~6週間。組織の準備や外部委託する検査機関によっては、さらに日数を要する可能性もあります。保険適用の多くの方は、進行がんで時間との闘いだけに、大問題です。

 その現実に着目すると、ゲノム医療はまだまだバラ色の治療法ではありません。進行がんになって慌てるより、がんの予防と早期発見を心掛ける方が無難です。

 がんの予防もメタボ対策に通じる部分が大きく、適度な運動と食事の改善が欠かせません。それにプラスして、検診をきちんと受けること。これに尽きます。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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