進化する糖尿病治療法

食べて飲みながら血糖値をコントロール不良にしないワザ

写真はイメージ
写真はイメージ(C)PIXTA

 最近は忘年会に参加しない人が増えているようです。シチズン時計が10月に実施した意識調査では、ビジネス関連の忘年会の回数を「0~1回が適当」と答えた人が9割近く。1次会の時間も「2時間」が約半数を占め、帰りを気にする時間は「20時前」が4人に1人でした。もしかしたら何年か先には、忘年会という風習がなくなっているかもしれませんね。

 とはいえ、これはビジネス関連に限っての話。友人同士、親しい同僚同士などでは、忘年会を楽しむ人はまだまだ多いのではないでしょうか? 忘年会でなくても、「年末だし」「1年頑張った自分へのご褒美」などといった口実で、外食の回数が増えたり、暴飲暴食をしてしまったり、ということもあるでしょう。

 年末年始の過ごし方として念頭に置いていただきたいのは、「連日はやめる」。飲み会が続いたとしても、「昨日は存分に食べて飲んだから、今日は控える」という気持ちを持ってほしい。結果的に「今日も飲み過ぎてしまった」となっても、意識するのとしないのとでは違います。無意識にブレーキがかかるかもしれない。

「体重計で体重や体脂肪率などを毎日チェック」も、ぜひやってほしいことです。どういうふうに食べて飲んだら体重が増えるのか、逆にどういう食べ方飲み方をすればダメージを最小限に抑えられるのか、体重や体脂肪率などの変動から読み取れると思います。

 ある職場では、「宴会では枝豆を最初に、鶏の唐揚げを最後に」と書かれたポスターが貼ってあるそうです。その職場は営業職が多く、彼らは夜の会食が普段から頻繁にある。かつ、外回りが中心のために食事時間も不規則になりがち。男性が中心で、女性と比較して料理に関する知識に乏しく、宴会時にどうしても揚げ物や肉料理に偏って注文してしまう。そのせいもあり、メタボの人が多い。「規則正しい食生活を」「カロリー抑えめに」と産業医などが言っても改善が見られない……というより、改善が難しい。夜の会食も仕事のうちですから。そこで実現可能な策として、前出のポスターを作製したとか。

 枝豆は大豆と野菜の栄養を兼ね備えており、ビタミンB1、B2を豊富に含みます。ビタミンB1には糖質を分解する作用があり、ビタミンB2には脂質を分解する作用があります。糖質と脂質を代謝し、エネルギー源にする作用が期待できるため、つまみとして最初に食べるのは非常にいい。

 もちろん、ほかの食品にも同様の作用が期待できるものがありますが、枝豆はたいていの飲食店にありますし、「ビタミンB1、B2を豊富に含むものを最初に食べましょう」と言われるよりも、記憶に残りやすく、実行に移しやすい。

■宴会シーズンに役立たせる

 こういったほんのちょっとの工夫も、続ければ大きな成果につながります。その職場では、血圧計をデスク周りにおいていつでも誰でも測れるようにするなどの“ほんのちょっとの工夫”をほかにもしており、社員のみなさんの健康意識が少しずつ上がってきているそうです。

 この試みの素晴らしいところは、“ほんのちょっとの工夫”に加え、社員みんなで取り組める内容にしていること。職場環境と健康は密接な関係にあります。一人で思い立っても行動に移しづらいことはたくさんある。営業職であれば、「会食をなくす」ことはできない。会食ありを前提に、みんなでできることを掲げているところに意味があるのです。

 “ほんのちょっとの工夫”という点では、「食事量を大幅に減らせない。だから食事の時、最後の一口を残す」「ビール飲んでポテトチップス食べながら、テレビでスポーツ観戦するのが趣味。ポテチはやめられないから、小さい袋のものを買うようにしている」などの方法で、少しずつ体重などを減らしていった例もあります。年末年始対策であれば「揚げ物は1個だけにする」「モチを食べる時はほかの炭水化物を食べない」「寝正月にしない」などもいい。家族や友人、同僚らと示し合わせれば、より成功率が上がる。健康的に、年末年始を過ごしてください。

坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

関連記事