「怒りは無力感に変わった。拍子抜けだった。半年間にわたる医師や治療方針への不満をはじめとするたくさんの疑問、不信、忿懣も、すべては総一朗の情報操作、隠蔽工作のせいだったのだ。その徹底した秘密作戦の前では、だんだん私の怒りや苛立ちも些細なことに思えてきた。それでも私は、それは離婚の理由にだってなると言った。彼は絶対言えないと言い張った。それが愛情の証のように言われると、ありがとうとまでは言わないが、つい黙ってしまうのだった。でも、このことに関しては、いまでもすべてを許してはいない」
予後の悪いタイプであることを後で知った節子さん、節子さんのことを思って隠していた総一朗さん、そんなおふたりの気持ちが、私はよく分かる、理解できる気がしました。
■今はまず本人に告げてから家族に話してよいかをき決めるが…
がんと向き合い生きていく