役に立つオモシロ医学論文

肺がん予防には「ヨーグルト」と「食物繊維」が効く

食物繊維とヨーグルトの両方を摂ると、肺がんリスクが30%以上有意に低下
食物繊維とヨーグルトの両方を摂ると、肺がんリスクが30%以上有意に低下(C)日刊ゲンダイ

 体に良い影響を与える微生物を含む食品を「プロバイオティクス」と呼びます。ヨーグルトなどはその代表的な食品ですが、他方でそのような微生物に必要な栄養源となり、健康の増進維持に効果が期待できる食物繊維などの食品成分を「プレバイオティクス」と呼びます。

「ヨーグルトや食物繊維の摂取と肺がんの関連」について検討した研究論文が米国医師会が発行するがんの専門誌の電子版に2019年10月24日付で掲載されました。

 この研究は米国、欧州、アジアで実施された10件の観察研究を統合解析したもので、解析に含まれたのは62万7988人の男性(平均57・9歳)、及び81万7862人の女性(平均54・8歳)でした。

 中央値で8・6年にわたる追跡調査の結果、肺がんのリスクは食物繊維の摂取量が最も低い集団と比較して、最も多い集団で17%、統計的にも有意に低下しました。ヨーグルトについても摂取しない集団と比較して、摂取量が最も多い集団で19%、統計的にも有意に低下しました。さらに食物繊維とヨーグルト両方の摂取量が最も多い集団では、食物繊維の摂取量が最も少なく、ヨーグルトを摂取しない集団に比べて肺がんのリスクが30%以上、統計的にも有意に低下するという結果でした。

 食物繊維やヨーグルトを積極的に摂取している人は健康に対する関心が高く、もともと肺がんのリスクが低い集団だったのかもしれません。また肺がんを引き起こす強い原因は喫煙です。喫煙者では食事内容よりもまずは禁煙を考慮したいところです。

 とはいえ、食物繊維やヨーグルトなどの乳製品はバランスの良い食事には欠かせないものでしょう。適度な摂取を心がけることで、健康状態を良好に保つことができるかもしれません。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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