上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

感染性心内膜炎の増加に含まれる見直すべき「キーワード」

順天堂大学医学部心臓血管外科の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 そう考えると、米国で報告された感染性心内膜炎の急増は、世界中の開発途上国でも同じように起こる可能性があります。貧富の格差に加え、法的秩序が乱れて薬物乱用が増えれば、発症の条件がさらに整うことになります。

■感染症との「いたちごっこ」はまだ続いている

 医学がまだ進歩していなかった時代は、先天性疾患がある人や感染症にかかりやすい体質の人は早くに亡くなっていました。そうした病気にならない人が生存競争を勝ち抜いて生き残り、人類を増やして社会を発展させてきた歴史があります。それが、医学の進歩によって脆弱な条件を持っている人も生き延びることができるようになり、そうした人々も含めて一緒に構築する社会が実現しました。近年になって起こっている感染性心内膜炎の急増は、医学の発展によってもたらされた現代社会が、かつての生存競争を勝ち抜いて生き残った人々だけが構築してきた社会と適合しなくなりつつあることの表れかもしれません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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