医療情報の正しい読み方

症例対象研究「後ろ向き」と「前向き」の意味の違いとは

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 この「前向きの研究」は一般に「コホート研究」と呼ばれます。「コホート」とは古代ローマの軍隊用語で、数百人の歩兵隊の集団のことをコホートと呼んでいたようです。それが臨床研究の用語に転じて、研究対象となる一定の集団のことを指すようになっています。

 ある一定の地域住民をコホートとして設定し、冷え体験を調査し、その後インフルエンザにかかるかどうかを追跡し、冷え体験がある人とない人で、インフルエンザにかかる割合が異なるかどうか調べる、というのが前向きコホート研究で、この方法で思い出す際のバイアスが避けられるのです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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