進化する糖尿病治療法

食物繊維を増やすと血糖・血圧・脂質を同時に改善できる

豆腐、野菜、ナッツ類には食物繊維が豊富

 すると、空腹時血糖が28%、収縮期血圧(上の血圧)が15%、コレステロールが9%、中性脂肪が23%低下したのです。血糖、血圧、脂質はすべて心・脳血管疾患のリスク因子であり、今回の研究の結果はすなわち、食物繊維の積極的な摂取で、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが下がることを意味します。

 私自身、糖尿病治療は血糖をコントロールするだけでは不十分で、血圧、脂質もともに下げ、基準値範囲内を維持する必要があると考えています。糖尿病を放置すると進行する病気のひとつが動脈硬化ですが、数カ月の血糖コントロールを示すHbA1cだけが基準値範囲内であっても、血圧、脂質が悪いと、動脈硬化の進行を止められません。

■冬は積極的に食物繊維を取って

 以前もこの連載で紹介しましたが、私たちが糖尿病データマネジメント研究会と共同で行った「ABC Study JDDM49」は、血糖、血圧、脂質の1年間の変動を調べたものです。「ABC」の「A」はHbA1c(血糖)、「B」はBlood Pressure(血圧)、「C」はLDL―Cholesterol(脂質のひとつ、LDLコレステロール)のこと。血糖、血圧、脂質は、春から夏に近づくにつれガイドラインで定められている治療目標値への達成率が高くなり、冬に近づくにつれ達成率が低くなる。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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