がんと向き合い生きていく

手術が年明けに…患者は年末年始をどんな気持ちで過ごすのか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 かつて私が勤務していた病院では、12月25日のクリスマスが近くなると「ベッドが満床だから」といった理由で、新しく診断された急性白血病患者、手術が困難になった重症ながん患者が大病院からも送られてきました。失礼な言い方になってしまいますが、当時の私にとっては毎年確実に来るクリスマスプレゼントでした。診療科のグループで年末年始の勤務予定表を作っていても、まったく関係なく毎日出勤になりました。

 とりわけ、急性白血病患者が紹介されてきた場合は大変です。まず、正月中の特殊な輸血の確保が急務です。赤十字血液センターに、供給をお願いする血小板や新鮮血などの輸血予定の単位数を申し込みます。

 紹介されてきた患者の「生きたい」、われわれ医療者の「生かしたい」という一念で、闘いは早急に始まります。個室で強力な抗がん剤治療が開始され、ほとんど毎日採血を行って白血球数や血小板数などで病状を把握し治療します。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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