パンツで隠れている部分は、赤く腫れたりする“おでき”のような皮膚病変ができやすい部位です。
たとえば、毛穴の奥の毛根を包んでいる部分(毛包)に炎症が起こる「毛包炎」は全身どこにでもできますが、陰部付近でもよく見られます。
原因は、主に「黄色ブドウ球菌」や「表皮ブドウ球菌」といった皮膚常在菌の感染です。毛包部に軽い傷がついたり、汗などで湿った状態が長く続いたり、免疫力の低下などが誘因になります。
毛包炎は毛穴に赤みを帯び、中央に膿をもった盛り上がり(膿疱=のうほう)が見られます。かゆみや痛みはほとんどありません。しかし、悪化して膿疱に硬く触れる「根」をもつようになると「せつ」と呼ばれ、赤く腫れて痛みや圧痛を感じます。
一般的に「おでき」と呼ばれるのは、せつのことで、顔の鼻の部分にできると俗称「面疔(めんちょう)」と呼ばれます。
せつがさらに悪化して、炎症が隣り合う複数の毛包に広がると「よう」と呼ばれ、より強い痛みや発熱が出ます。軽度であれば皮膚を清潔に保つことで症状は自然と軽減しますが、せつの状態になったら皮膚科や外科を受診した方がいいでしょう。
お尻の割れ目の上(腰側)が赤く腫れ、膿がたまる「毛巣洞(もうそうどう)」という病気もあります。毛深い肥満の人に起こりやすく、米国では振動するジープに乗る軍人に多いことから「ジープ病」とも呼ばれます。
原因は、生えている毛が皮膚に突き刺さり、その下で毛が塊となって細菌感染の病巣をつくるのです。ひどく痛み、たまった膿が破れてパンツに付くことがあるので「痔瘻(じろう)」と見間違うことがあります。完全に治すには、手術で毛が入り込んだ部分をひと塊に切除する必要があります。
良性腫瘍のひとつである「粉瘤(アテローム)」も外陰部にできることがあります。皮膚に盛り上がった大小のシコリができる病気です。粉瘤は毛穴の上部がめくれて皮膚の下に袋状の構造物ができ、袋の内部も表皮と同じ構造をしています。そのため本来、皮膚から剥がれ落ちるはずの角質や皮脂が袋の中にたまってしまうのです。
ただし、外陰部にできる粉瘤は、小豆大のシコリが多発し、中身が白く石灰化(硬い)する特徴があります。
男性は陰嚢に多発し、女性は陰唇に多発します。腫れや痛みはありませんが、見た目が悪いので、治療する場合は電気メスなどでシコリを袋ごと除去します。袋を完全に除去できれば、ほぼ再発はしません。
専門医が教える パンツの中の秘密