上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

若い世代に増加中の「梅毒」は心臓にも深刻な状態を招く

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 ここ数年、日本では性感染症の「梅毒」が増えています。1990年代以降は患者数が年間1000人を下回っていましたが、2010年ごろから増え始め、17年には44年ぶりに感染者が5000人を突破。18年は6900人を超え、現行の集計方法になってから最多の感染者数を記録しました。梅毒は、スピロヘータ科に属する「梅毒トレポネーマ」という細菌に感染することで起こります。主に保菌者との性行為によって接触した粘膜や皮膚の小さな傷から体内に侵入し、感染を放置したまま長期間経過すると、心臓、血管、脳といった複数の臓器に重大な病変を引き起こし、最悪の場合は死に至ります。

 梅毒による心臓の病変でいちばん深刻なものは梅毒性大動脈瘤です。感染後に治療せず10年ほど経過すると、血流に乗った細菌が大動脈で炎症などの問題を引き起こし、大動脈の壁が弱くなって一部に瘤をつくるケースがあるのです。細菌感染による大動脈瘤は破裂しやすいといわれていて、突然死するリスクも高くなります。

1 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事