そうしたことから、かつては梅毒が院内感染の要因として最も警戒され、術前のスクリーニング検査が重視されていました。しかし、効果的な抗生物質の普及で感染者が激減したことで近年はそれほど注意されなくなり、一時期は「TPHA法」と呼ばれる血清検査で抗原抗体反応を見て、梅毒の既往があるかどうかを含めて確認するだけにとどまっていました。最近になって梅毒感染者が増加傾向にあることから、再び術前のスクリーニング検査が重要になってきています。
近年では、エイズの原因であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している患者さんは事前に医療者に申告してくれるのですが、梅毒は本人が感染に気付いていないケースもあるため、なおさら注意が必要なのです。
■あらためて「性病教育」の徹底が望まれる
手術を予定している患者さんが梅毒に感染していた場合、早急に梅毒トレポネーマを駆逐しなければなりません。まずは感染症の専門科に相談して外来で治療を受けてもらい、完治してからあらためて手術を行います。いまから20年以上前になりますが、梅毒に感染していた患者さんの手術を同じ手順で実施した経験があります。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」