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さっぱりしたものに合う柚子胡椒には疲労回復効果が

ローストポーク(手前)と白身刺し身の柚子胡椒風味サラダ
ローストポーク(手前)と白身刺し身の柚子胡椒風味サラダ(C)日刊ゲンダイ
和の香辛料(4)柚子胡椒

 柚子胡椒は、刻んだ青柚子の皮と青唐辛子を粗くすり潰し、塩を入れてまぜ、柚子果汁を加えて熟成させた辛味調味料です。

 わたしが使っているのはカネトシの「枯木ゆずごしょう」。枯木柚子とは種から100年以上かけて育った、高さが20メートルにもなる木に実る果実のことです。深くまで張った根は地中のミネラル分を多く吸収しますから、実る柚子はそれだけ味も香りも強いものになります。通常の柚子胡椒は塩気が多いのですが、カビの出ないぎりぎりの塩分で作られています。

 前回、ご紹介したかんずりが味のしっかりしたもの、油で焼いたり揚げたりしたものとの相性が良いのに対し、柚子胡椒はさっぱりしたもの、だし汁ベースのもの、白身の魚や鶏肉や豚肉、野菜などとよく合います。ともに辛味調味料ですけれど、材料や調理法によって使い分けたいものです。

 22日は冬至でした。冬至に柚子湯に入ると風邪をひかないといわれています。柚子には抗酸化作用や疲労回復効果のあるビタミンCが豊富です。

 今回は柚子胡椒を白身のお刺し身にかけるドレッシングとローストポークに使いました。豚肉に多く含まれるビタミンB1にも疲労回復効果がありますから、年末年始に家族で召し上がり、一年の疲れを取り除いてください。

■ローストポーク

《材料》
◎豚肩ロース  500グラムの塊
◎柚子胡椒  大さじ1
◎オリーブオイル  大さじ3
◎にんにくすりおろし  小さじ1
◎白ワインビネガー  大さじ2
◎ジャガイモ 2個の皮をむき一口大の乱切り
◎チキンスープ  1カップ
◎白ワイン  大さじ3

《作り方》 
(1)豚の肩ロースに柚子胡椒、オリーブオイル(大さじ2)、にんにく、白ワインビネガーを合わせたものを擦り込み、15分置く。
(2)オーブンに蓋をして入れられる鍋を中火にかけて、オリーブオイル(大さじ1)を加熱、水気を抑えた豚の肩ロースの全面を焼き付ける。
(3)チキンスープと白ワインを加えて一度煮立てたら、蓋をして220度に予熱をしたオーブンで20分焼き、ジャガイモを加えさらに20分焼く。
(4)焼き汁を小鍋に入れて煮詰め、味を見てソースにする。肩ロースは15分置いたら好みの厚さに切り、ジャガイモを添えてソースをかける。

■白身刺し身の柚子胡椒風味サラダ

 白身魚の刺し身約50グラムを薄いそぎ切りにして、ほんの少量のふり塩をしたら冷蔵庫で10分置く。
 柚子胡椒小さじ2分の1、オリーブオイル大さじ2、千鳥酢または米酢大さじ1を合わせて回しかける。好みの野菜と合わせるとよい。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

カネトシの「枯木ゆずごしょう」
カネトシの「枯木ゆずごしょう」(C)日刊ゲンダイ
箸でつまめる「和風のラー油」抗菌、抗酸化作用

 柚子胡椒とは、柚子と胡椒をまぜたもの、ではない。この場合の胡椒とは、唐辛子のこと。唐辛子の辛味成分カプサイシンが大量に含まれている。だから柚子胡椒はピリリと辛い。柚子の皮を薄くむき、細かくみじん切りにしたものと、種を取った青唐辛子をみじん切りにしたものをすり鉢ですり潰す。ここに塩と柚子の果汁を加えて味を調える。これが柚子胡椒。

 柚子の皮をよく見るとブツブツがたくさんちらばっていることがわかる。これは精油をたくわえている油滴。柑橘系のアロマ成分や色素成分をたっぷり含む。アロマ成分の代表はリモネン。レモンのよい香りがするとともに抗菌作用がある。また色素成分はオレンジ色のカロテンがある。カロテンは抗酸化作用の他に、動物にとってはビタミンAの原料にもなる重要物質。なので柑橘類は皮にこそ栄養があるといえる。その意味で、柚子の皮を大切に使った柚子胡椒は立派な健康食品。精油とカプサイシンをまぜたものなので和風のラー油と呼んでもよい。ラー油と違ってお箸でちょっとつまめるので、焼き鳥や刺し身の薬味に最適。今回のレシピのように白身の刺し身のドレッシングや豚肉料理にも使える。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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