Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

池江選手が退院 白血病治療のカギ握る移植前処置の重要性

退院した池江璃花子選手(C)日刊ゲンダイ

 移植する細胞は、患者さんに適合する型の細胞を持つ人を探します。まず家族で、家族に見つからなければ、骨髄バンクで探すことに。細胞を提供するドナー探しも大変ですが、新しい正常細胞をしっかり患者さんに根づかせるために行う移植前処置も困難です。

■成功で血液型が変わる人も

 移植前処置の目的は、腫瘍細胞を減少させ、患者さんの免疫細胞を抑えること。免疫細胞が活発だと、新しい正常細胞がきちんと根づかないのです。一般には、複数の抗がん剤を併用するため、副作用が強く、嘔気や倦怠感、脱毛はよく見られます。

 池江さんも「思ってたより、数十倍、数百倍、数千倍しんどいです」とツイートしていたように移植前処置は、とにかくつらいのですが、これなしに移植は成功しません。とても重要です。

 場合によっては、放射線の全身照射(12グレイ)を行うことも。

2 / 4 ページ

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

関連記事