症例対照研究に結果をゆがめてしまうバイアス(編集部注=かたより)があるように、コホート研究(同=分析疫学の手法のひとつ。特定の要因に暴露した集団とそうでない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究のこと)にもバイアスがあります。コホート研究なら大丈夫ということはありません。今回はコホート研究のバイアスについて説明します。
前回、コホート研究として、冷え体験を調べておいて、その後にインフルエンザにかかるかどうかを「前向き」に追跡して、冷え体験があるグループが、ないグループと比べて、2倍インフルエンザになりやすいという結果が出たとしましょう。しかし、冷え体験があるグループの乳幼児の割合が30%、ないグループの乳幼児の割合が15%だとします。乳幼児は親が代わりに答えるために、「ちょっと汗をかいた」「ちょっと薄着だった」というように、冷え体験が高い率で報告された状況です。
乳幼児のインフルエンザにかかる率がそれ以外に対して2倍だとすると、冷え体験があるグループのインフルエンザの増加は、乳幼児が多いことを反映しているだけで、冷えとの関係は見せかけにすぎないというわけです。
この状況を、多くの冷え体験が報告された乳幼児にインフルエンザが多いことが交絡(同=ある結果について2つ以上の要因が考えられ、それぞれの原因がどの程度結果に影響しているか区別できないとき、これらの要因を交絡しているという)した見かけ上の関係というわけです。そして、この乳幼児という因子を「交絡因子」といいます。コホート研究の結果は交絡因子の影響を考慮して検討しなくてはならないのです。
この交絡因子は、実はコホート研究だけにかかわるバイアスではありません。症例対照研究においても重要なバイアスのひとつです。このバイアスを避けるためには、「マッチング」「多変量解析」という統計手法で対応できます。マッチングや多変量解析で交絡因子を調整した観察研究の結果は、より妥当なものと判断できます。
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