骨と筋肉の疑問に答える

半月板損傷は何もしないと変形性膝関節症になる可能性アリ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

【Q】「半月板損傷」と診断されました。将来、「変形性膝関節症」になる可能性はありますか?(元高校球児の38歳男性)

【A】可能性はあります。

 私の患者さんで半月板損傷から変形性膝関節症になった方がおられました。交通事故で半月板を損傷し、手術とリハビリを勧めたのですが、何もしないまま病院に来なくなった50代の男性は、4年後に来院されたときには変形性膝関節症になっていました。

 半月板とは、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)の間にある軟骨の板です。関節を安定させて、大腿骨と脛骨の関節面の衝撃を和らげる働きがあります。損傷を受けるのは膝を曲げているときにねじれが加わったときなどです。一般的には膝関節靱帯損傷と合併して生じることが多いといわれています。

 急性期の半月板損傷では痛みと腫脹(炎症などが原因で、体の組織や器官の一部が腫れあがること)が表れます。

 2つ以上の骨が連結されている関節には、関節包で覆われた関節腔と呼ばれる隙間があります。その中には関節包から分泌された滑液で満たされています。滑液は骨摩擦の軽減や軟骨細胞への酸素や栄養の供給、老廃物の排出などを行います。半月板が損傷すると、滑液に炎症性サイトカインが多く集まり、炎症が出て、痛みと腫れが生じるのです。

 さらに「キャッチング」と呼ばれる膝を伸ばすときの引っ掛かり感、「膝くずれ」と表現される膝がガクッと崩れるような感覚などが表れることがあります。もっとも代表的な症状は「ロッキング」です。半月板の一部が関節内に入り込んで起きるもので、一定の角度で屈伸したまま膝を伸ばすことができなくなります。

 半月板損傷というとすぐに痛みが出ると思われがちですが、そうではありません。膝の半月板が摩耗して消失している老人はたくさんいますが、彼らが痛みを感じないのは半月板がなくても大腿骨と脛骨の関節面にある軟骨が残っているからです。

 その軟骨まで摩耗して直接骨同士がぶつかるようになると、歩いたり、運動したりしたときに痛みが出たり、関節に水がたまる「関節水腫」を繰り返すようになります。そうなると、いずれ変形性膝関節症になる可能性が出てくるのです。

 変形性膝関節症とは、膝の関節の軟骨が徐々にすり減って変性し、関節そのものが変形したり関節炎を招いたりする病気です。

 原因により2つのタイプがあり、加齢や肥満、O脚や正座などが原因となる1次性膝関節症と骨折や靱帯損傷などの後遺症として起きる2次性膝関節症があります。

 こうなると治療は手術が基本となります。

水井睦

水井睦

みずい整形外科院長。日本整形外科学会認定専門医、同会認定脊椎脊髄病医、同会認定リウマチ医、日本体育協会認定スポーツドクター。1995年北里大学医学部卒業。横浜市立大学医学部整形外科入局。大学病院、国立病院などを経て、2005年から東京・祐天寺にて開院。

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