がんと向き合い生きていく

がん予防や効く薬を探す 遺伝子検査は確実に進歩している

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 2人に1人はがんになる時代ですから、親戚にがんの人がいない方がまれかもしれません。遺伝するがんはたしかにありますが、はっきり遺伝すると分かっているのはがん全体の数%にすぎません。たとえば、家族性の乳がん・卵巣がんになりやすいといわれる遺伝子変異が分かっています(遺伝性乳がん卵巣がん症候群=HBOC)。

 もし、この遺伝子変異を持っていると、生涯のうちに乳がんや卵巣がんになる可能性が高いのです。このような遺伝するがんの遺伝子を持っているかどうかの検査は、採血して血液を調べます。「遺伝子カウンセリング」ができる病院で相談されたほうがいいでしょう。

 HBOCは、有名なハリウッド女優ががんになる前に乳腺を切除したことで話題になりました。その後、日本でもHBOCと分かったら乳腺と卵巣を予防的に切除する方がいらっしゃいます。たとえば、HBOCの患者さんが乳がんになった場合、対側の乳腺にがんがなくても切除する、また卵巣を切除するなど、がんの予防的手術を行うことでその後のがんリスクを減らすことになるのです。2020年度からはHBOCの患者さんの予防手術が保険適用されることになりました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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