がんと向き合い生きていく

がん予防や効く薬を探す 遺伝子検査は確実に進歩している

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■遺伝子パネル検査は2019年から保険適用に

 次に、効果的な抗がん剤を探すために行うがん組織の遺伝子検査についてお話ししました。

 Fさんの姉の夫の進行した大腸がんでは、大腸がんの組織の遺伝子を検査して治療薬を探すことから「遺伝子パネル検査」と呼ばれます。この検査は採血する検査ではなく、手術で採取したがん組織の遺伝子を調べます。そして、その患者さんに合った薬剤を探すのです。

 これまでの治療は、臓器別に適応薬が決まっていました。たとえば、A薬は臨床試験で「統計上、膵臓がんの患者に効く」という結果があるので国は保険適用としています。しかし実際には、その患者さんに効くかどうかは投与してみないと分からないのです。

 2019年に遺伝子パネル検査が保険適用となったのは、「標準治療がない固形がん(主に希少がん、小児がんなど)」と、「局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者(終了が見込まれる者を含む)」でした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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