医者も知らない医学の新常識

医学誌で研究報告 ヒトは体温が低いほど長生きをする

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 体温というのは、最も簡単に測定できる健康のバロメーターです。人間は体温を一定に保っていて、発熱も低体温も、いずれも深刻な病気のサインです。ただ、この場合の体温というのは、脳や内臓の「深部体温」のことで、通常、体温計で測定しているのは皮膚の表面の温度ですから、そこには決して小さくはない違いがあるのです。

 よく「低体温で心配」とクリニックを訪れる方がいます。「低体温や冷えが多くの病気の原因で健康の敵だ」といった情報がちまたにあふれているからです。しかし、測定された体温が35度を切っていても、それは皮膚の表面が冷えているだけで、ほとんどの場合、深部体温は正常なのです。

 それでは、体温は高い方がいいのでしょうか、それとも低い方がいいのでしょうか? 

 2017年の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」という医学誌に、体温と健康との関係を検証した大規模な疫学研究が発表されています。3万5000人以上のアメリカ人を長期間観察した結果、体温が約0・15度上昇すると、1年間に死亡するリスクが、8・4%有意に増加していました。つまり、体温が低いほど長生きという意外な結果です。その原因は不明ですが、体温が高い人は代謝が活発で、それが命を縮める原因のひとつであるのかもしれません。

 体温が低めでも、心配する必要はなさそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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