日本人で良かった!公的医療保険

米国の乳がん治療は自分で動かなければ主治医も決まらない

日本では病院任せにできるが…(写真はイメージ)

 風邪などのありふれた病気は薬局で市販薬を買って自分で治療し、病院にかかりたければ自費で受診する。その代わり、がんなど命に関わる病気の治療は、手厚く公的保険制度でカバーする――。公的医療保険制度について、専門家の間で、こうした方向へ見直す議論が行われています。私は、利用者である国民もこの議論に参加すべきだと考えています。そのためには日本の公的医療制度で維持すべき利点を理解する必要があります。

 そこで私の知人で昨年乳がんと診断された50代の女性Aさんの話を通じて、日米の医療制度の違いについて考えてみたいと思います。

 彼女は大学卒業後、米国に渡り、カリフォルニアのある都市にひとりで住んでいます。勤務する弁護士事務所が大手に買収され、民間医療保険の運営会社が代わったことがきっかけで、以前から指摘されていたマンモグラフィー上の小さな石灰化を精密検査することになりました。そこで6ミリ大の石灰化が確認され、ステージゼロの乳がんと診断されたのです。

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奥真也

奥真也

1962年大阪生まれ。東大医学部卒業後、フランス留学を経て埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学教授などを務める。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。著書に中高生向けの「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社)、「人は死ねない」(晶文社)など。

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