これは不幸中の幸いでした。元の運営会社では当面Aさんが精密検査の対象になることはなく、発見されるころには病状が進んでいたと推測されるからです。このように、米国のサラリーマンの大多数が受ける医療は、勤務先の会社が契約する民間保険に大きく影響されます。
日本なら、公的保険で精密検査を受けられます。それが無理なら自分でお金を出して受診できます。しかし、米国では一つ一つの医療行為が非常に高額なため、民間保険がカバーしてくれる検査以外を受けることは現実には相当難しいのです。
日本では、乳がんが見つかればすぐに医師が紹介状を書き、患者の要望を聞きながら、がん治療に詳しい専門医を紹介してくれます。病院に通ってさえいれば、治療は進むのです。
米国ではそうはいきません。最初に民間医療保険に入った段階で、プライマリーケア医と呼ばれる、日本で言うかかりつけ医のような専門家を探さなければなりません。むろん、Aさんにとっては初めての経験です。リストにあるどの医師の名前も一向にピンときません。会社の人や知人に聞いてみましたが、素人同士の悲しさ、これといって役に立つ助言は得られなかったそうです。Aさんが日本とは全く異なる、「医師探し」に戸惑いと強いストレスを感じたのは当然です。
日本人で良かった!公的医療保険