そうこうしている間に足の付け根の血管からカテーテルを入れられて、「うそー」と思いながら、モニター映像でカテーテルが自分の血管の中を通っていくのを見ていました。局所麻酔なので意識があり、手術室に聞き覚えのあるジャズが流れていたのがうれしかったことを覚えています。
ふと時計を見ると午後3時だったので、執刀の先生に「あの、すみません。今日すぐそこの会場でコンサートがあって、6時に行ければ何とかなるのですけど……」と言ってみたのです。
すると、「アホちゃうか!」と先生が烈火のごとく怒って、私の顔にグッと顔を近づけて「あんたの心臓は壊死しているかもわからん。急、性、心、筋、梗、塞! 脳に行ってたら何梗塞や!?」と叱られました。
でも、その関西弁の勢いに思わず「ここで阪神高速とか言った方がいいのかな」と一瞬ボケがよぎったのも、はっきり覚えています。結局、「コンサートどころやないで」とダメ出しされて、気付いたら管が何本もつながれた状態で集中治療室にいました。
独白 愉快な“病人”たち