専門医が教える パンツの中の秘密

現在も世界で2億人以上が“被害者”に…「女性器切除」の恐怖

女性器切除(FGM)などの有害な行為に反対するマサイ族の少女(ケニア)/(C)ロイター

 世界には「割礼」と呼ばれる風習、儀式があると聞いたことがある人は多いと思います。

 普通は男子の陰茎包皮の一部を切除して亀頭を露出させる手術のことを指し、いわゆる「包茎手術」と同じようなものです。

 イスラム教やユダヤ教は、宗教上の信条から新生児期に割礼を行う伝統があります。キリスト教が約8割を占める米国では、宗教的理由とは関係なく、衛生上の理由などから1990年代までは新生児期に包皮切除手術を行う風習がありました。

 しかし、衛生上の必要性が薄いこともあり、98年に小児科学会から包皮切除を推奨しないガイドラインが提出され、手術を受ける男子は減りました。それでも6割程度は包皮切除手術を受けているとされています。

 一方、女子はどうか。実は、世界ではアフリカを中心に女性器を切除する儀礼を持つ地域があるのです。かつては「女子割礼」と呼ばれましたが、比較的無害な男子の割礼と違って、健康を損なう慣習で、女性の人権を侵害する行為であることから「女性器切除(FGM)」と呼ばれるようになり、世界から批判が集まっています。2012年には国連総会でFGMを禁止する決議が採択されています。

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尾上泰彦

尾上泰彦

性感染症専門医療機関「プライベートケアクリニック東京」院長。日大医学部卒。医学博士。日本性感染症学会(功労会員)、(財)性の健康医学財団(代議員)、厚生労働省エイズ対策研究事業「性感染症患者のHIV感染と行動のモニタリングに関する研究」共同研究者、川崎STI研究会代表世話人などを務め、日本の性感染症予防・治療を牽引している。著書も多く、近著に「性感染症 プライベートゾーンの怖い医学」(角川新書)がある。

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