遺伝子治療薬はここまで来ている

最高額の薬はウイルスを使って遺伝子を細胞の核まで届ける

写真はイメージ

「脊髄性筋萎縮症」(SMA)に対する遺伝子治療薬の解説を続けます。前回は、2種類ある遺伝子治療薬「スピンラザ」(一般名:ヌシネルセン)と「ゾルゲンスマ」のうち、スピンラザについてお話ししました。スピンラザは世界初の核酸医薬品で、価格は1瓶(5ミリリットル)で932万円、最初の1カ月の薬代は3000万円弱という超高額医薬品として注目されました。

 しかし、ゾルゲンスマはそれをはるかにしのぐ現在の最高額医薬品で、1回の投与が約2億3000万円という超ド級の金額なのです。ただし、ゾルゲンスマは国内未承認で、日本国内で使用されることはありません。

 ゾルゲンスマの画期的なところは、まず「一生に一度きりの投与」という点が挙げられます。通常、薬は継続的に使用するものですが、ゾルゲンスマは一度で効果を持続するのです。

 2つ目に、目的としている神経細胞の核まで薬を到達させるのに「ウイルスを用いている」という点で画期的です。簡単にいうと、病気(SMN1遺伝子異常)によって不足したSMNタンパク質を再び体内で作れるようにするため、SMN1遺伝子をウイルスに入れ、そのウイルスを感染させることによって薬を細胞まで運ぶのです。

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神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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