病気を近づけない体のメンテナンス

肝臓<上>水と交互に飲み1週間に2日の休肝日を設けたい

写真はイメージ
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 体内の臓器で最も大きく重たい「肝臓」。1日に一升瓶にして1200本分もの血液が流れ込む。肝臓の働きの中でも重要なのが、①食べ物から取った栄養素を体で使える形に変える「代謝」、②アルコールや有害物質などを分解して無毒化する「解毒」、③消化吸収に必要な「胆汁の生成」だ。

 健康診断で肝機能が「異常なし」といわれた人でも、一度はチェックしておきたいのが「肝炎ウイルス」の感染の有無で、気づかないうちに慢性肝炎を発症し、肝硬変や肝がんに進行する恐れがある「B型肝炎」と「C型肝炎」は要注意だ。日本肝臓学会肝臓専門医で「銀座しまだ内科クリニック」(東京都)の島田昌彦院長が言う。

「B型やC型は性交渉でも感染します。感染しても肝機能が正常な人がいて『無症候性キャリアー』といって、いつ慢性肝炎を発症するか分かりません。B型では無症候性キャリアーから、いきなり肝がんを発症する場合もあるので要注意です。それに本人が自覚していないので、感染を広げてしまうことが問題です」

 B型肝炎ウイルスの検査は「HBs抗原」と「HBs抗体」、C型肝炎ウイルスの検査は「HCV抗体」をチェックする。通常の会社の健診項目には含まれていないことが多いので、受けていなければ保健所などで一度は検査を受けておいた方がいい。

 また、肝臓に大きな負担をかける生活習慣といえば、誰もが真っ先に思い浮かべる「酒の飲み過ぎ」。アルコールを分解するときにできる毒性のあるアセトアルデヒドや、アルコールそのものが肝臓を傷つけるのだ。

 アルコール性肝障害の初期には肝臓に中性脂肪が蓄積する「アルコール性脂肪肝」になることが多く、検査項目(血液検査)では「AST(GOT)」や「γ(ガンマ)―GTP」が高値を示す。そのまま飲酒の習慣を続けていると、肝細胞が破壊されて炎症を起こす「アルコール性肝炎」や、肝細胞が壊死して線維化する「アルコール性肝線維症」に進行する。そして、さらに飲酒を続けると「肝硬変」や「肝がん」に至るのだ。

「よく肝臓は“沈黙の臓器”といわれ、自覚症状がなく進行するといわれますが、早期の脂肪肝の状態では『体がだるい』『疲れやすい』、肝臓が腫れるので『右腹の違和感や鈍い痛み』などの症状が表れます。この時点で飲酒習慣を改善すれば元に戻せます。重症型のアルコール性肝炎になってしまうと、発熱や腹痛が起こり、半数くらいは亡くなってしまいます」

■飲んで酒に強くなった人が危ない

 肝臓に負担をかけない1日の飲酒の「適量」は、純アルコール量で約20グラム程度とされている。酒の種類で換算すると、ビールは中瓶(ロング缶)で1本、焼酎(35度)では2分の1合、ワインではグラス2杯、日本酒では1合、ウイスキーではダブル1杯となる。

 ただし、この適量は酒に強い人に対しての基準だ。アルコールは肝臓でアセトアルデヒドに分解され、さらにALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)によって無毒の酢酸に分解されて体外に排出される。日本人には、このALDHの働きが弱い(酒に弱い)人が約40%いる。

 その人たちにとっては先の適量も肝臓への負担が2~4倍高くなる。最も危ないのは酒に弱かった人が鍛えられて強くなったケースで、よりアルコール性肝機能障害になりやすいという。とはいっても毎日飲む酒好きな人が、いきなり適量に減酒するのは難しい。

「それは到底無理なので、まずは今、一日に飲んでいるお酒の量を半分に減らすことを目標にするのがいいでしょう。そして、徐々に適量に近づけていく努力をする。また、肝臓は非常に再生能力が優れているので、『休肝日』を設けることはとても有効です。まったく飲まない日を、1週間のうちに2日は設けるのが理想です」

 酒を飲むときは、高カロリーや塩分の多いつまみは控え、肝細胞の修復に役立つ良質なタンパク質(枝豆や冷ややっこなど)やビタミン、ミネラル、食物繊維を多く含んだ食品を意識して取るといい。また、アルコール度数の高い酒は水などで薄めたり、水と交互に飲むようにすれば肝臓への負担を減らせる。

 肝臓のアルコール処理能力は1時間に体重1キロ当たり約0・1グラム程度とされている。体重60キロの人なら、日本酒1合が分解されるまで約3時間かかる。飲み過ぎて肝臓に負担をかけないように、酒の処理能力も時間も覚えておこう。

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