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どんな料理にも合い捨てるところがない大根 ビタミンC豊富

大根とベーコンとのグラタン(手前)、大根のさっと煮
大根とベーコンとのグラタン(手前)、大根のさっと煮(C)日刊ゲンダイ
旬を食す(2)大根

 大根はいまが旬の野菜です。

 品種改良が進み、年間を通して手に入れることができるようになりましたけど、寒い時季の方がみずみずしく、甘味もあります。葉に近いほど甘く、下にいくほど辛味が強くなります。

 消化を助け、胃腸を整える酵素が含まれているため、食べ過ぎや胃もたれにお勧めなのは大根おろしです。

 大根には抗酸化作用のあるビタミンCが豊富です。中でも皮や、緑黄色野菜である葉に多く含まれています。旬のいまだからこそ味が良く、栄養も豊富なのです。

 ビタミンを効果的に吸収しようと思ったら、生で皮や葉もいただくことですが、今回は加熱して食感の違いを楽しんでいただきます。

 ひと品目はベーコンとのグラタン、ふた品目はダシでさっと煮たものです。

 グラタンは最初にフライパンで焼いたものをさらにオーブンで焼くため、しっとりとした食感になるのに対し、さっと煮の方は拍子切りにした大根を沸かせたダシにくぐらせるだけですから歯応えを楽しめます。

 さっと煮に加える塩分は大さじ1のナンプラーだけ。あとはダシのうま味で十分、おいしくいただけます。

 大根は生でおろし、刺し身のつま、酢の物、加熱しておでん、漬物などさまざまな用途があるうえ、どんな料理にも合う野菜です。今回は洋風のグラタンに使いましたけれども、シチューの具としても重宝します。葉や皮も含めて捨てるところがない代表的な野菜です。

■ベーコンとのグラタン

《材料》
◎バター  大さじ1
◎ベーコン 100グラム(厚さ7ミリのひと口大)
◎大根 7センチ(皮をむいて厚さ7ミリのいちょう切り)
◎サワークリーム 2分の1カップ
◎白ワイン 大さじ4
◎にんにくのすりおろし 小さじ4分の1
◎卵黄 1
◎塩、白こしょう 少々
◎ナチュラルチーズ 50グラム

《作り方》
 フライパンにバターを溶かす。ベーコンの脂を出しながらゆっくりと炒めたら大根を加え、大根に脂を絡めるようにさっと炒める(写真)。オーブンウエアにベーコンと大根を広げたら、サワークリーム、白ワイン、にんにく、卵黄、塩、白こしょうを合わせたものをのせ、上にナチュラルチーズを広げる。200度のオーブンで10分、焼き色が付くまで焼く。

■さっと煮     

 大根10センチ分を半分に切り、皮をむき、7ミリの角棒状に切る。ダシ2カップを沸かし、酒大さじ3、ナンプラー大さじ1、大根を加え、さっと煮立てたら火を切り、蓋をしてそのまま室温になるまで置く。温めても、常温でも冷やしてもいい。好みで粗びきのこしょうが合う。

▽松田美智子(まつだ・みちこ)女子美術大学非常勤講師、日本雑穀協会理事。ホルトハウス房子に師事。総菜からもてなし料理まで、和洋中のジャンルを超えて、幅広く提案する。自身でもテーブルウエア「自在道具」シリーズをプロデュース。著書に「季節の仕事 」「調味料の効能と料理法」など。

大根は皮をむき7ミリのいちょう切りに。ベーコンの脂を絡めるようにさっと炒めて
大根は皮をむき7ミリのいちょう切りに。ベーコンの脂を絡めるようにさっと炒めて(C)日刊ゲンダイ
首の部分が甘く、尻尾にいくと辛くなる理由

 大根は日本人にとって最もなじみの深い食材のひとつ。おでんや煮物はもちろん、サラダや大根おろしとしても常用される。

 俗に青首大根といわれるように、大根は首(葉っぱに近い方)がほんのり青く(緑色)、尻尾にいくと真っ白になる。その名の通り植物における根だが(大根はアブラナ科)、植物の細胞は基本的にはどの部位の細胞でも多分化能を保持している。なので、根っこの細胞であっても光が当たれば、光合成能力を発揮して葉っぱの機能を果たせる。したがって、地上に近い首の部分はクロロフィル(光合成を行う緑色の色素)を持つ。光合成を行うと糖ができるため、大根は首の部分の方が甘い。そして尻尾の方にいくと、甘味が減る代わりに、辛味が増す。

 大根の辛味成分はアリルイソチオシアネートという物質で、からしやマスタードと同じ成分。なので、大根おろしを作る時は尻尾の方を使うとよい。

 大根の95%は実は水分のため、超低カロリー食材。おいしいダシでじっくり煮込めば、味がしっかり染みたふろふき大根の出来上がり。

 大根には特有のさわやかな苦味がある。これは主としてポリフェノールの作用。子供は苦味をいやがるので大根が嫌いなことが多いが、大人はこれがおいしくなる。年を取ることの効用のひとつだ。

▽福岡伸一(ふくおか・しんいち)1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。

※この料理を「お店で出したい」という方は(froufushi@nk-gendai.co.jp)までご連絡ください。

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