Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

だいたひかるは放射線に25万円 高額療養費を使い尽くすワザ

がん患者の不安解消に一役買っているお笑いタレントのだいたひかるさん
がん患者の不安解消に一役買っているお笑いタレントのだいたひかるさん(C)日刊ゲンダイ

 がんになって気になるのは治療法もさることながら、医療費も大きいでしょう。そんながん患者の不安解消に一役買っているのが、お笑いタレントのだいたひかるさん(44)のブログです。

 今月14日に「放射線25回分の金額」とのタイトルで、昨年に受けた放射線の医療費を投稿。25回分で25万7420円だったそうです。読者の共感も大きく、「参考になった」「(金額の)目安が分かり安心しました」といったコメントが複数寄せられています。

 だいたさんは2016年1月にステージ2bの乳がんが発覚。その年の2月に右の乳房を全摘したものの、昨年3月に再発したことで、放射線治療を受けたのでしょう。治療法によって医療費は異なりますが、今回はがんの医療費と節約のコツを紹介します。

 乳がんの手術は、入院7日で乳房を温存し、リンパ節切除がないと、総額は75万円ほど。3割負担(以下同)で約23万円。全摘してリンパ節切除があると、およそ100万円で自己負担額は30万円に。温存手術後の放射線は25回の場合、47万~70万円で同14万~21万円。

■長期戦のがん治療で効果テキメン

 決して安くはありませんが、日本には自己負担額をさらに抑える仕組みがあります。ブログでは「高額医療」と書かれていますが、正しくは「高額療養費制度」。健康保険が適用される治療を受けた医療費の月額の上限額を圧縮する制度で、収入区分によって上限額は異なります。

 たとえば、69歳以下で標準報酬月額が28万~50万円なら、「8万100円+(月額医療費-26万7000円)×1%」です。仮に医療費の総額が100万円だとすると、3割負担のままなら30万円ですが、この計算式を使うと、「8万100円+(100万円-26万7000円)×1%」=8万7430円に。元の医療費からみると、8%程度です。

 国民健康保険の人は自治体の窓口に、健保組合の人は組合に申請すると、3割負担分との差額が還付されるのが一般的。そうすると、まず3割分を病院で支払わないといけません。

 そこで奥の手が。手術などで入院する前に事前に自治体や組合などに「限度額適用認定証」を申請して、入院時に保険証と一緒に病院に提出すれば、退院時に支払う医療費が高額療養費制度の上限額で済むのです。だいたさんが「先に提出して」と書いているのは、この裏技を使ったことを意味しています。

 がんの治療は、往々にして長期戦で、高額療養費制度はそんな長期戦に効果を発揮します。3カ月以上、高額療養費の対象になると、4カ月目から「多数該当」になり、上限額がさらに抑えられます。先ほどと同じ収入区分だと、月額4万4400円です。

 自費治療は高額療養費の対象外ですが、放射線は99%以上が保険適用。適用外は粒子線の一部ですから、ほとんどが高額療養費制度の対象になります。充実した高額療養費制度がありますから、がん保険の中身はよく考えてください。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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