帯状疱疹ワクチンの驚きの効果 頭痛が起こらなくなった

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 帯状疱疹(ほうしん)ワクチンを接種してから54カ月後までに、群発頭痛の改善が認められた人は99%――。昨年11月の日本頭痛学会で東京女子医科大学病院頭痛外来の清水俊彦医師が発表し、注目を集めている。

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 清水医師が群発頭痛と帯状疱疹の関係に着目したのは2007年ごろ。

「群発頭痛患者の副腎皮質ホルモン剤による予防的投与中、群発頭痛の側と同じ三叉神経領域に帯状疱疹を発症する患者がいたのです。副腎皮質ホルモン剤は免疫機能を低下させます。そして帯状疱疹は、免疫機能が低下した時に三叉神経などの神経節に潜む帯状疱疹ウイルスが再活性化して起こる。となれば、三叉神経に潜む帯状疱疹ウイルスが、群発頭痛の発症に関係しているのではないかと考えたのです」

 そこで清水医師は27人の群発頭痛患者の帯状疱疹ウイルス抗体価を測定した。すると群発頭痛の発作後、3分の2以上で抗体価が上昇し、継続。これは、群発頭痛の発作時に帯状疱疹ウイルスが再活性化していることを示している。

「さらに群発頭痛の発作時、副腎皮質ホルモン剤の予防的投与に加え帯状疱疹治療で使う抗ウイルス薬を5日間投与すると、頭痛発作期間が短くなったのです。ただ、この抗ウイルス薬は皮膚に発症した帯状疱疹に適応とされているもので、群発頭痛の発作時に繰り返し処方しづらい。そこで帯状疱疹ワクチンの効果の研究を行ったのです」

 帯状疱疹ワクチンを打った群発頭痛患者94人の発作状況を56カ月間追跡調査した。ワクチン投与36カ月後の質問票では「改善した(発作が起きていない)」と回答した人が71%。投与54カ月後には、99%の人に何らかの改善が見られた。56カ月後には、36カ月時点で改善が見られなかった人も、このうち63%が「改善した」、26%が「発作は起きたが短期間で改善した」と答えた。

 群発頭痛の原因のひとつは、目の奥にある海綿静脈洞という静脈のネットワークのむくみだと推測されている。

「三叉神経の帯状疱疹ウイルスが活性化すると海綿静脈洞のむくみを誘発する神経炎症物質が放出されます。群発頭痛は睡眠中に起こりやすいのですが、海綿静脈洞の血流は立っている時は上から下へと流れむくみが改善し、睡眠時に横になると血流が停滞してむくみやすくなることとも関連していると考えられます」

 清水医師は片頭痛の患者でも帯状疱疹ワクチンの効果を調べており、群発頭痛と同様の結果が出ている。

「最近は帯状疱疹ウイルスがさまざまな病気のリスクを高めることが分かっています。脳血管障害、アルツハイマー型認知症、多発性硬化症、顔面神経まひや片側性眼瞼けいれんなどです。命にかかわる病気や治療薬がない病気もあることを考えると、予防策として帯状疱疹ワクチン接種をお勧めします」

 ワクチンは任意接種。帯状疱疹は厚労省が「50歳以上を承認」としているため、医療機関も対象を「50歳以上」としているところが多い。49歳以下はまずは相談から。

 なお、帯状疱疹ウイルスは水ぼうそうのウイルスと同じ。子供の時にかかって治っても神経節に潜在しており、免疫力低下などで増殖し再活性化して神経痛や皮疹などの症状を出す。また、子供の頃に水ぼうそうのワクチンを打った人は、20~30歳くらいでその効果が薄れてきている可能性が大きいので、病院で抗体価のチェックをした上でワクチン接種を検討してみては。

■群発頭痛とは

 明らかな基礎疾患のない慢性頭痛を「一次性頭痛」といい、主に緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛がある。群発頭痛は、頭の片側や目の奥の辺りに、のた打ちまわるような激痛が起こり、目の充血、涙や鼻水が止まらなくなる。症状が出始めると1~2カ月間、連日連夜、約1~2時間ぐらい症状が出る。鎮痛薬は効かず、「トリプタン」の自己注射や酸素吸入で対処する。

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