遺伝子治療薬はここまで来ている

難治性の白血病の遺伝子治療薬は「患者自身の血液」が薬に

 キムリアの製造方法を大まかに解説すると、自分の血液を採血などで取り出し、そこからT細胞と呼ばれる血液成分を分離し、そのT細胞に遺伝子改変(導入)をします。つまり、自分自身の細胞をいったん取り出し、がん細胞を攻撃できるように攻撃力を高めた上で、自分の体に戻すのです。

 遺伝子治療というだけでも画期的ですが、自分自身の細胞が遺伝子改変によってパワーアップして薬となり、自分自身を助けるというのですからすごい時代になったものです。

 次回は、キムリアの対象となる病気や画期的な遺伝子治療法「CAR―T療法」について、詳しくお話しします。

2 / 2 ページ

神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

関連記事