元広島・北別府さん襲った成人T細胞白血病とはどんな病気

白血病を公表した元広島投手の北別府学さん
白血病を公表した元広島投手の北別府学さん(C)日刊ゲンダイ

 プロ野球・広島カープの元エースで通算213勝を挙げた北別府学さん(62=野球解説者)が血液がんの一種である「成人T細胞白血病」(ATL)で21日から入院することになった。昨20日、レギュラー出演する地方テレビ局の情報番組内で自ら公表。その後自身のブログを更新して詳細を説明した。

 それによると診断は2年前。経過観察をしていたが去年11月の検診から白血球の数値などが上がってきたため、21日から広島県内の病院に入院。抗がん剤などの化学療法を行ったうえで、骨髄移植を行うという。

 北別府さんはブログで、「軽いかぜのような症状が続いていますが、白血病に見られるような体のだるさや発熱も全くありません。診断が下ったあと、しばらくは何も手がつかない状態でしたが、年が明けてから少し気持ちも落ち着いてきました。治療期間は3カ月から半年ほどだと予測されますが、個人差があるようです。化学治療が始まったら体調が悪くなり髪の毛も抜けると聞きました。解説者としてカープの日本一を見届けるために必ずや復活します」とコメントしている。

「成人T細胞白血病」は「HTLVー1」と呼ばれるウイルスが原因の血液のがんの一種。感染経路は、主に母親から子供への母乳を介する母子感染で、空気感染はしない。ほかに輸血や性交(主に男性から女性)などによる感染もある。

 HTLV-1に感染しても自覚症状はなく、感染者の約95%は生涯、病気を発症することのない「キャリア」となる。授乳や性交渉による感染は、キャリアが女性なら子供へ、男性なら妻にうつることが多い。自分がキャリアかどうかは、抗体検査(血液検査)をすれば分かる。感染者が生涯にATLを発症する確率は約4~5%。個人差があるが、ATLの潜伏期間は40年以上であるため、40歳以下ではほとんど発症しない。

 HTLV-1は、まれにだが「HTLV-1関連脊髄症(HAM)」と呼ばれる脊髄の病気や、「HTLV-1関連ぶどう膜炎(HU)」という目の病気も引き起こす。

 HAMになる確率は約0.3%、HUは10万人当たり約110人の発症。この場合は潜伏期間が数年以上で、若い人でも発症する。

 ATLはかつて、「九州の沿岸地方の風土病」といわれた白血病で、発病していないキャリアは、九州・西南沿岸地方に集中していたが、人口の流動化によって九州・西南沿岸地方だけでなく、関西、首都圏など全国に広がっている。最近は母子感染予防対策などによって、新たにキャリアは減少しているが、それでも全国で約100万人と推定されている。

 日刊ゲンダイの連載「がんと向き合い生きていく」の中で、かつて都立駒込病院名誉院長の佐々木常雄氏は、「ATLが発症した場合の病態は多様で、進行が速い場合と穏やかな場合があり、急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型に分類されます。治療法は、CCR4抗原がある場合は分子標的薬『モガムリズマブ』の使用が可能です。薬物併用療法は進歩していて、いろいろな工夫がなされています。また、治癒が期待できる同種造血幹細胞移植も検討されます」と話していた。

 ちなみに、同じALTを2009年に発症した元宮城県知事の浅野史郎(71)氏は2年間の闘病の末、復活している。

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